先週、米Amazon.comが高機能なスマートフォンなど複数のハードウエアを開発していると米Wall Street Journalが伝えた。Amazonのハードウエア開発計画をめぐっては、これまでも幾度となくメディアが報じてきたが、タブレット端末と電子書籍端末以外に具体的な製品は出ておらず、これら報道の信憑性を疑う市場関係者もいた。
だが、複数の海外メディアの“事情に詳しい関係者”の話を総合してみると、Amazonは確かにハードウエア事業を強化しようと、さまざまに模索しているようだ。
その根拠の一つとされているのが、米Appleのお膝元であるカリフォルニア州クパチーノにあるAmazonの研究開発部門「Lab126」である。この部門を率いるのは、Appleや米Palmでハードウエアの開発を手がけていたGregg Zehr氏という人物。同部門の従業員数は2012年時点で800人強に上り、英ReutersによるとAmazonは米MicrosoftのWindows Phone部門でマネジャーを務めていた人物を雇い入れるなど、この部門の雇用を急拡大している。
3Dディスプレイのスマホや映画配信用のSTBを開発中
Wall Street Journalによると、AmazonはLab126でプロジェクトA、B、C、Dといった名称でさまざまなハードウエア製品の研究開発を進めており、一連の開発計画は社内で「アルファベット・プロジェクト」と呼ばれている。
そのうちの一つが、米Bloombergなどが先月下旬に報じた動画配信サービス用のセットトップボックス(STB)である。映画やテレビ番組といった動画コンテンツを購入したり、レンタルしたりして、その場でダウンロード、ストリーミング再生できるというものだ。
このプロジェクトを率いているのが、米Cisco Systemsで消費者向け映像事業を手がけ、Appleにも9年間在籍していたMalachy Moynihan氏。プロジェクトにはデジタルビデオレコーダー(DVR)の米TiVoや米ReplayTVなどに在籍していたベテラン技術者も加わっているという。報道の内容はかなり具体的だ。
そして先週、Wall Street Journalが開発計画を伝えたのが、3Dディスプレイを搭載するスマートフォンと音楽のストリーミング再生用端末だ。
前者のスマートフォンは、裸眼で3D画像を見ることができるディスプレイを搭載しているという。視線検知センサーが組み込まれており、どんな角度から見てもホログラムのように画像がディスプレイの上に浮かび上がる。Wall Street Journalは、目の動きだけで端末を操作できるようになる可能性もあるとしている。
Amazonのスマートフォン開発計画については、昨年BloombergやCNNなどが、台湾Hon Hai Precision Industry(鴻海精密工業)傘下の中国Foxconn International Holdings(富士康国際)が協力していると伝えていた。しかしこれまでは採用される技術についての言及はなく、今回のWall Street Journalの報道はAmazonのスマートフォン開発計画の存在を裏付ける有力な情報だと指摘されている。
本記事は、日経BP社の総合ITサイト「ITpro」向けに弊社が執筆した記事「AmazonがAppleのお膝元でハードウエアの研究開発、長期投資戦略の一環」の一部です。全文は、ITproのサイトにてお読みください。