2月中旬、米Appleは、タブレット端末「iPad」やスマートフォン「iPhone」向けアプリケーションで、定期刊行物などのサブスクリプション(定期購読)サービスを開始すると発表したが、このとき併せて明らかにした利用規約が波紋を広げている。
新サービスは、毎週、毎月、毎年などと、好みの期間で購入手続きを済ませれば、定期的にデジタルコンテンツが配信されるというもの。アプリ配信/販売サービス「App Store」の米国版では、同月初旬にNews Corporationの電子新聞「The Daily」のサブスクリプションサービスが始まったが、ちょうどこれと同じ仕組みをほかの出版社にも提供するというのだ。例えばThe Dailyの場合、ユーザーは1週間(99セント)と年間(39.99ドル)のいずれかで決済を済ませば、期限日まで毎日コンテンツが自動配信されてくる。
Appleの利用規約では、出版社はこれまで同様に自社サイトなどを通じてコンテンツのサブスクリプションを販売でき、App Storeでは同じ内容のアプリを無償配布できる。この場合出版社は、自社の顧客を識別するための認証の仕組みをアプリ内に用意する必要があるが、Appleの決済システムを介さないため、収益の30%を同社に徴収されることはない。
しかし、もし出版社がアプリと自社サイトの両方でサブスクリプションを販売したいと考える場合は事情が変わってくる。「App Storeにおけるコンテンツの価格は、出版社サイトで提供する価格と同じか、それよりも安くしなければならない」とされているからだ。またAppleは「アプリ内にはコンテンツ購入が可能な外部Webサイトなどへのリンクを設けてはならない」ともしており、この条件を満たしていないアプリは6月30日までに変更しなければならない。これに対し、出版社はマーケティング戦略や価格設定で自由が奪われると反発しているのだ。
また出版社側は、「名前やメールアドレスといった顧客情報は、顧客が同意した場合のみ出版社に提供する」という規定も問題視している。Appleはアプリ内でダイアログボックスを出してユーザーの同意を求めるようだが、わざわざ同意のアクションをする人は少ないだろうというのだ。出版社にとって不可欠な読者情報が得られないとなると、広告展開や誌面づくりにも悪影響を及ぼすと懸念している。
本記事は、日経BP社の総合ITサイト「ITpro」向けに弊社が執筆した記事「米国で注目集める「デジタルサブスクリプション」、Apple、Google、Amazonがサービス開始」の一部です。全文は、ITproのサイトにてお読みください。