2019年12月、米グーグルのグループ会社で空の無線通信基地局事業を手がける米ルーン(Loon)がウガンダ政府から領空飛行の認可を受けたと、ロイター通信などが伝えた。ルーンは同年7月、隣国ケニアの山村地域に提供する4G(第4世代移動通信システム)サービスの計画を発表し、そのための試験的な商用サービスを始めると明らかにしていた。
気球を高度2万メートルの成層圏に漂わせて地上に電波を発信し、インターネット接続を提供する。今回のウガンダでの飛行認可はこの計画に不可欠だったと、ルーンのグローバル通信部門を統括するスコット・コリエル氏は述べている。ウガンダ上空の複数の気球によってケニアの広域をカバーする通信サービスを提供できるようになるからだ。
同社では飛行プランの最終的な詳細をまとめており、早急にケニアでサービスを始めたいとコリエル氏は話している。ケニアのインターネットニュースサイト、テックウィーズによると、ルーンはタンザニアなどの他の国でも領空飛行の認可取得を目指して政府関係者と協議中。アフリカ大陸の様々な国で同様のネット接続サービスを提供したい考えだという。
なお、ルーンの前身はグーグルが最先端の研究開発に取り組む組織として設けた「グーグルX」のインターネット接続環境構築プロジェクトだ。グーグルは15年10月にアルファベットを親会社とする組織再編を実施したが、このときプロジェクトをアルファベットの先端技術研究事業「X」に移管した。そして18年7月、自動運転車開発の米ウェイモ(Waymo)と同じく、アルファベットの野心的な新規事業として独立させた。
ルーンの気球は薄いプラスチック素材で作られており、重さは75キログラム。この気球に同じく計75キログラムの通信機器や太陽光発電パネルなどを搭載する。成層圏で最大限に膨らんだ時の大きさは縦24メートル、横11メートルで、テニスコートとほぼ同じ。複数の気球が仮想的につながり、地上の数千台に上る電子機器に電波を送ることができるという。
ルーンはケニアで同国3位の通信事業者テレコム・ケニアと協力し、いまだネットを利用できない山村地域の住民に対し一般的な料金で4G通信サービスを提供する計画。2社は同国中南部の高地の町、ニエリなどで地上基地局の整備を進めている。テックウィーズによると、これらの基地局から上空の1つの気球に電波を送る。それを他の複数の気球に送信し、気球から地上の携帯端末に電波を送ることで、広域通信サービスを実現するという。ルーンはこのシステムについて、地上で膨大な数の基地局を設置するのに比べてコストを抑えられ、サービス網の整備が迅速に進むと説明している。
本記事は、日経BP社の技術とビジネス変革の最前線を伝えるサイト「xTECH」向けに弊社が執筆した記事「グーグルとアマゾンが「空の無線基地局」で事業拡大競う、アップルも参入か」の一部です。全文は、xTECHのサイトにてお読みください。