米Appleは先週、米証券取引委員会(SEC)に年次報告書(Form 10-K)を提出した。その内容はおおむね事前に公開されていた決算報告書と同じだったが、今回初めて9月末までの2012会計年度の研究開発(R&D)費用が明らかになり、ちょっとした話題になっている。
これによると、同社の2012年度の研究開発は、前年度の約24億ドルからほぼ10億ドル増の約34億ドルとなった。5年前の2007年に8億ドルだった同社の研究開発費は、その後11億ドル、13億ドル、18億ドルと増え続け、2012年度も過去最高となった。その増加率も約40%とここ数年で最高を更新している。
Appleの歴史で最大の新製品攻勢
同社は2012年10月23日に開催した「iPad mini」の発表イベントで、第4世代の「iPad」やノートパソコン「MacBook Pro」、デスクトップパソコン「iMac」「Mac mini」の新モデルも併せて発表した。また9月には新型スマートフォン「iPhone 5」を市場投入している。
Tim Cook最高経営責任者(CEO)によると、同社がこうして数多くの製品を一斉に市場投入するのは初めてのこと(写真)。このような新製品攻勢の背景には、長期におよぶ研究開発があり、年間を通じて多額の費用がかかる。とりわけiPhone 5や第4世代のiPadは、同社が初めて社内の開発チームだけで設計したと言われる「A6」「A6X」プロセッサを搭載している。こうして同社の研究開発の規模は、売上高の拡大に伴い、年々増え続けている。
この年次報告書にはもう1つ興味深いことが書かれていた。Appleは来年9月末までの2013会計年度中に、新たに30〜35店舗の直営店をオープンする計画を立てている。同社の直営店は今年9月末時点で世界に390店舗あり、そのうち250店は米国内、140店は米国外だ。2013年度は新規出店の3分の2が米国外の店舗になる予定。現在のAppleの売上高のうち、米国と米国外の比率は39対61。こうした状況を踏まえ、Cook CEOは海外での販売を加速させたい考えだ。
Cook氏はCEO就任以来、いくつかSteve Jobs時代とは異なる戦略を取ってきた。続々と市場投入する新製品や積極的な海外展開も、Jobs時代とは大きく異なる成長戦略だ。Appleという企業は、Cook CEO主導のもと大きな変革期を迎えており、海外メディアは「Cookの新時代が本格的に始まった」などと報じている。
本記事は、日経BP社の総合ITサイト「ITpro」向けに弊社が執筆した記事「AppleでCook CEOの新時代が本格到来」の一部です。全文は、ITproのサイトにてお読みください。