ここのところ中国のIT大手2社、Lenovo Group(聯想集団)とHuawei Technologies(華為技術)の動きが顕著になってきた。パソコン大手のLenovoは米国スマートフォン市場への進出を狙っている。通信機器大手のHuaweiはフィーチャーフォンメーカーからの完全脱却を目指し、自社ブランドの強化を図っている。
いずれも共通するのは、本国の中国市場でスマートフォン事業が好調なこと。両社はこの勢いに乗り、世界市場でシェアを拡大したいと考えているようだ。
Lenovo、パソコンが好調も新たな成長エンジンを模索
このうちLenovoと言えば、低迷する世界のパソコン市場で唯一好調を維持しているパソコンメーカーである。市場調査会社の米IDCによれば、2013年1〜3月期のLenovoの出荷台数は1170万台で、首位の米Hewlett-Packard(HP)の1199万台とは僅差の2位に付けている。Lenovo自身も決算発表で、2013年3月末までの1年間で業界全体のパソコン出荷台数が8.1%も減少したのに対し、Lenovoは10.2%も伸びたとしている。
だがIDCによると、2013年1〜3月期の世界パソコン出荷台数は同社が統計を取り始めた1994年以降最大の落ち込み。上位5社の中ではLenovoだけが前年同期比の横ばいで、ほかは軒並み2桁台の落ち込みだった。
そうした中、Lenovoはパソコン以外の市場で成長を維持していきたいと考えている。同社の楊元慶・最高経営責任者(CEO)兼会長は先ごろ米Wall Street Journalのインタビューに応じ、「長期的な成長のための新しい成長エンジンを探っており、スマートフォンがその新たな機会になる」と述べている。
Wall Street JournalによるとLenovoは、昨年から中国以外の市場でスマートフォン事業を拡大しており、まず手始めにインド、ロシア、インドネシアといった新興国市場に進出。そして次に狙うのが米国と欧州の市場だという。楊CEOは「今後1年以内に米国のスマートフォン市場に進出したい」とWall Street Journalに話している。
楊CEOがこうしてスマートフォン分野に自信を示すのには根拠がある。米Strategy Analyticsがまとめた中国のスマートフォン市場調査によると、昨年1年間の中国におけるLenovoの販売台数シェアは13.2%で、韓国Samsung Electronicsの17.7%に次いで2位となった。Lenovoのシェアは前年の4%から大きく拡大し、米Appleの11%、Huaweiの9.9%、中国Coolpad(酷派)の9.7%を上回った。
狙うは「モバイル」と「北米」、米Yahoo!の共同創業者を迎え入れ
楊CEOのこれらの発言と直近の決算を照らし合わせると、Lenovoが現在置かれている状況が分かってくる。今年1〜3月期における同社の全売上高に占めるパソコン事業の売り上げは約83%。一方でスマートフォンを含むモバイル関連事業はまだ9%程度だ。また地域別の売り上げ比率を見ると「中国」が40%で最も多く、この後「アジア太平洋・中南米地域」が21%、「欧州・中近東・アフリカ地域」が24%、「北米」が15%となっている。つまり、楊CEOは「モバイル」と中国以外の市場、とりわけ「北米」に成長の余地があると考えているのだ。
なおLenovoは今年2月に米Yahoo!の共同創業者Jerry Yang氏を取締役会オブザーバーとして迎え入れた。LenovoはYang氏起用の具体的な理由を明らかにしていないが、英Reutersなどは、スマートフォンやタブレット端末などLenovoのモバイル事業拡大の一環と伝えている。
Lenovoについては、香港証券取引所に同社が提出した書類で、スマートフォンの合弁事業設立に関して他社と協議していることも明らかになっている。この「他社」についてLenovoは何も明かしていないが、Reutersは、日本国内でパソコン事業を統合しているLenovoとNECが、今年の初めから事業の売却や提携の可能性について協議していたと伝えている。この協議が今どのように進んでいるのか明らかではないが、Lenovoはスマートフォン分野でも買収などを通じた事業拡大を狙っているとReutersなどは伝えている。
本記事は、日経BP社の総合ITサイト「ITpro」向けに弊社が執筆した記事「世界市場を狙う中国2社、LenovoとHuaweiがスマホを重視する理由とは」の一部です。全文は、ITproのサイトにてお読みください。