米アップルは2021年9月、1週間にも満たない短い期間に2度、アプリストア「App Store」の規約を変更すると明らかにした。アップルの課金手数料に対する批判をかわしたり、訴訟を有利に進めたりすることが目的とみられる。だがすでに多くの大手アプリ開発企業が、アップルの決済システムを回避する策を講じており、規約改定による同社事業への影響は軽微だと指摘されている。ロイターは、議員や規制当局がアップルに対する厳しい姿勢を変えることはないだろうと報じている。
日本の公取委と和解、規約改定を全世界に適用
アップルは2021年9月1日、App Storeを調査していた日本の公正取引委員会と和解し、規約の一部を改定すると明らかにした。和解に基づき22年初頭から一部のアプリを対象に、手数料の支払いを回避しやすくする措置を取る。具体的には、アプリ内に開発者のウェブサイトへのリンクを1つ設置することを認める。開発者はこのリンクから自社サイトに利用者を誘導できる。これにより利用者は外部の決済サービスで支払いを済ませられるようになる。
ただし、アップルはこれに条件を付けている。雑誌や新聞、書籍、音楽、動画といった購入済みのデジタルコンテンツやサブスクリプション(サブスク、継続課金)コンテンツを閲覧・視聴するアプリのみが対象となる。アップルはこれらのアプリを「リーダーアプリ」と呼んでいる。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などによるとスウェーデンの音楽配信大手Spotify Technology(スポティファイ・テクノロジー)や米動画配信大手Netflix(ネットフリックス)などのアプリがこれに該当する。
アップルは開発者がデジタルサービスやサブスクサービスを「iPhone」や「iPad」向けアプリ内で販売する際、アップルの決済システムを使うように義務付けている。同社の決済システムでは販売額の15〜30%に相当する手数料を徴収している。
一方、アプリ開発者は以前から、別途ウェブサイトなどで自社決済サービスを設置することが可能だった。アップルへの支払いを嫌う一部の開発者は、アプリ内でサブスクやコンテンツを購入できないようにしている。例えばスポティファイでは、アプリ内で有料プランへの切り替えができない。有料版に移行するにはスポティファイのウェブサイトで手続きする必要がある。米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)は、iPhoneやiPad向け電子書籍アプリ「Kindle(キンドル)」で電子本を販売していない。利用者が本を購入するためにはアマゾンのウェブサイトから手続きする必要がある。
本記事は、日経BP社の技術とビジネス変革の最前線を伝えるサイト「xTECH」向けに弊社が執筆した記事「アップルとグーグル、アプリストアで譲歩しても押し寄せる規制強化の波」の一部です。全文は、xTECHのサイトにてお読みください。