米Apple(アップル)のティム・クックCEO(最高経営責任者)は2023年3月25日に中国・北京を訪れ、同国政府が主催した「中国発展フォーラム」に出席した。同氏は中国の急速な技術革新や、アップルと同国の長期にわたる協力関係を称賛した。23年3月27日には、中国の王文濤商務相と会談し、アップルの中国での発展について意見交換した。両氏はサプライチェーン(供給網)の安定化について話し合い、王氏は「アップルを含む外国企業に良好な環境とサービスを提供することに前向きだ」と強調した。一方、こうした中でもアップルはサプライチェーンの中国依存を減らし、生産をインドなどの新興国に移そうとしている。
アップル、国際事業の経営刷新でインド比重一段と
米ブルームバーグやロイターによると、アップルは、国際事業の経営体制を刷新する計画で、インドに一段と比重を置くという。インドでアップル製品に対する需要が急増していることを受け、同社として初めてインドを独自の販売地域に設定する。これにより、アップル社内でインドは明確に意識される市場に位置付けられるという。
アップルではこのほど、インド・中東・地中海・東欧・アフリカ地域担当バイスプレジデントのユーグ・アスマン氏が退職した。今後はその下部組織であるインド部門の責任者、アシシュ・チャウダリー氏が昇格し、アスマン氏の後任を務める。チャウダリー氏は、アップルのグローバルセールス担当バイスプレジデント、マイケル・フェンガー氏の直属の部下になる。インドメディアのビジネストゥデイによると、そのフェンガー氏はアップルのグローバルセールスを統括する2人の幹部の1人で、ティム・クックCEOの直属の部下。つまり、これまでのインド責任者とクックCEOの距離が一段と近づくことになるという。
アップルの2022年10~12月期の決算は、売上高が前年同期比5.5%減の1171億5400万ドル(約15兆2400億円)、純利益が同13.4%減の299億9800万ドル(約3兆9000億円)だった。減収は19年以来、約4年ぶりだった。クックCEOは決算説明会で、業績に影響を与えた要因として、(1)ドル高(2)中国での生産混乱によるスマートフォンの供給制約(3)マクロ経済環境、の3つを挙げた。だが、同四半期のインドにおける売上高は、過去最高を更新した。こうした中、同社はインド市場に注力している。英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、決算発表の説明会ではインドに関する言及が15回あった。クックCEOは「私はインドに関して、とても強気の見通しを持っている。インド市場は非常にエキサイティングで、最も重要視している」と述べた。
アップルは同社としてインド初となる直営の実店舗を23年4月にオープンする。ロイターは23年4月6日、アップルがその店舗の外観を公開したと報じた。その後、アップルは「Apple BKC」という名称の店舗を23年4月18日にオープンすると発表した。インド経済紙エコノミック・タイムズによると、場所は西部ムンバイのショッピングモール「ジオ・ワールド・ドライブ」内で、店舗面積は約2044平方メートル。同社はインド2号店の出店計画も進めており、そちらのオープンは23年4〜6月になる。
本記事は、日経BP社の技術とビジネス変革の最前線を伝えるサイト「xTECH」向けに弊社が執筆した記事「アップル・鴻海・インド、「脱・中国過剰依存」で協力加速」の一部です。全文は、xTECHのサイトにてお読みください。